俺には勉強しかない

140字のその先

日常が楽になるシステマ・マスターの格言(読書メモ: 北川貴英 『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』)

『敵は最良の教師である』

———ダライ・ラマ

職場でクレーマーにしつこく詰られる。歯医者へ行く。パートナーと言い争いになる。会社の存続をかけた商談に臨む。交通事故に遭う。etc...
我々は戦場にいなくても、日常的に精神的、身体的な危機と、それに伴う緊張に晒されている。


一方、そのような危機に対処するための体系化された技術を学ぶ機会は、一般人には殆ど無い。
そのような技術を学ぶ手段として有効なのは、武術を習うことだろう。
武術は、「相手が自分に襲い掛かる」という、考えうる中で最大の危機への対処法だからである。


ステマとは、ロシア発祥の武術である。
徹底した脱力と、多人数、武器相手など実戦を想定した技に特徴がある。


私はシステムエンジニアで、納期が厳しいのに中々バグが取れない時などに強い緊張を覚えがちなので、
そういう時でもパニックにならずに、冷静に落ち着きを取り戻す方法を知るために、
『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』を読み始めた。


勿論、システマの技法自体は本を読んだだけですぐに出来るようにはならないが、
書籍内に載っていたシステマ・マスターの格言の中に、
武術の枠を超えて、日常生活の中でも活用できる素晴らしい考えが多数載っていたので、
当記事ではその一部を紹介する。

ステマ・マスターの格言:リラックス

「痛みは入り口です。人生を理解するためのドアみたいなものです。 人は産まれる時に痛みを経験します。母親もまた出産にあたって痛みを経験します。 痛みへの恐怖は力強いモチベーションになりますし、人が行動し、決断するのを助けてくれます。」

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

我々は無条件に痛みを避けがちだけれども、痛みを通じて学べることもあると思うと、
痛みに対する恐怖が多少和らいだ。

疲労も精神的なものです。いろいろと考えることで、 『こんなにエクササイズしたのだから自分は疲れているはずだ』と思い込んでしまうのです。」

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

「いい練習は疲れません。逆に体が活性化してエネルギーが増していくものです。」

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

これは自分も実感したことがある。対した仕事量をこなしてなくても、モチベーションが低いと
経過した時間の長さだけで「自分は疲れている」と思い込むことはよくあった。
また、タスクをサクサクとこなしていくと、ランナーズ・ハイというか、逆にエネルギーが増すような感覚を覚える。


ステマ・マスターの格言:メンタルヘルス

「自分の悪いところを自ら数え上げてはいけません。自信を失ってしまうだけでしょう。」

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス


自分はこれをよくやってしまう。自信を失って良いことは無い。

「私たちはしばしば自身の恐怖を手放すことを恐がります。 なぜなら恐怖心が自分の一部になってしまっているので、自分の全体性が失われるように感じるのです。

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス


本当にその通りで、自分は何かを怖がることによって、その対象から自分が守られている、
という錯覚のような安心感を抱いてる節がある。

「誇り、虚栄、怒り、これらはすべて心を傷つけるものであり、肉体にもよい影響を与えません。 病気は歓迎できませんが、むしろ病気の方がマシだと言えます。

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス


この格言には2つの意味があると思う。
一つは誇り、虚栄、怒りなどの負の感情は身体的な病気につながるということ。
もう一つは、それらの負の感情を消すことは、病気を治すこと以上の価値があるということ。
長い間闘病してる人にとっても有効な考えではないだろうか。


ステマ・マスターの格言:他者との対立

誰かが攻撃してきたとしたら、それは彼の魂の中に恐怖があるということです。 攻撃をしかける側はあなたが反撃するか抵抗せずに逃げるのを待っています。 攻撃された場合、まずは落ち着きを保たなければいけません。

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

素晴らしい格言だと思った。誰かを攻撃するのは、その誰かがいては困るような状況に攻撃者が陥っているからだ。
また、相手を狼狽させることが目的で攻撃を仕掛けてくる人もしばしば見かける。
いずれにしても、誰かから攻撃されたらまずは真っ先に落ち着きを保とうと思った。

反撃をしなくてはいけない時、それは公正でありつつも、加えられた攻撃を軽く上回らなければいけません。 反撃が下だったら、攻撃者の心性に必要なだけの影響を与えられません。 反撃が強すぎたら侮辱していると思われ、バランスを取り戻すためにまた攻撃をしてきます。 すなわち反撃のタイミングと程度はとても重要です。」

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

反撃は、落ち着きを保ち、客観的に正しいやり方によって、適切なタイミングと強さで行う。
とても勉強になった。
我々は、反撃のタイミングがあまりにも遅く、あまりにも強い傾向にあると思う。
また、落ち着きを払っている人はごくわずかだ。

正常な人間は誰に対しても正常な態度で接しなければなりません。よい人間に対しても、悪い人間に対しても。 そうしなければ、自分もまた邪悪な人間になってしまいます。」

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

素晴らしい価値観だと思った。世の中には、悪い人間には何をしてもいいと思ってる人が沢山いるし、自分もその傾向はあった。
それがよくないことであると思っても、綺麗事の域を得ない感覚があったが、
「悪い人間に対しても正常な態度で接する」という表現は、自分にとってしっくり来る表現だった上に、すごくかっこいいと思った。


ステマ・マスターの格言:生き方

今の世の中では、物事を分析するということが足りていません。人の分析力が低下しています。だから、どうしたらよいか分からないのです。」

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

「つねに真実を探し続けることが必要です。ただし、私たちが自分の頭で考え出したような真実ではなく、あなた自身がその試みの中でわかる真実です。

出典:北川貴英(2013)『やわらかな頭、もっと動ける身体のための!最強のリラックス―システマ・リラクゼーション』マガジンハウス

断片的な知識や、それにすら満たない偏見を聞いて知った気になる人は沢山いる。
ネットを見ていると、我々はただ偏見をコレクションしているだけではないか、と思うことすらある。


やはり、何事も自分で調べて、実際に手を動かして知りたいと思った。



やわらかな頭、もっと動ける身体のための! 最強のリラックス システマ・リラクゼーション


やわらかな頭、もっと動ける身体のための! 最強のリラックス システマ・リラクゼーション【電子書籍】[ 北川貴英 ]

終わりに

著者の北川貴英はYouTubeでも活躍しており、数多くの格闘家とコラボしている。
腹を殴られても、重い水の塊が跳ねるような音がするだけで効いていないのがすごい。


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「どのタイミングで戦闘を始めるか」など、技だけでなく「戦略」の部分でも実践的で面白い。

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