文系SEがAIITで単位バンク生になった感想を書きます
去年の秋から東京都立産業技術大学院大学の科目等履修生になり、CS関連の講義を受講していました。
そちらの成績が出て、次の学期がもうすぐ始まるので、区切りとして
文系の私が大学院で科目履修生としてCS講義を受けた感想を書きます。
自己紹介
私立文系大学卒の業務歴5年目のSEです。
大学受験も文系三科目で、理系の素養は無いです。
doordonts.hatenadiary.com
大学院について
東京都立産業技術大学院大学という学校で科目履修生になりました。
英語表記の頭文字をとって「AIIT」と表記されている事が多いです。
aiit.ac.jp
AIITは大学院大学(学部が無い大学院)で、なおかつ「専門職大学」に属します。
専門職大学院とは高度専門職業人の養成を目的とした大学院で、
少人数制、研究指導や論文審査が無いなどの特徴があります。
www.mext.go.jp
また、学生の約8割が社会人で、仕事を続けながら講義を受けています。
単位バンク制度について
AIITには単位バンク制度という科目等履修制度があります。
簡単に言うと、入学前に講義を受講して単位を取得できる制度です。
aiit.ac.jp
- 実際に講義を受けてみて入学するかどうかを決められる、
- 入試無しで講義を受けられる、
- 入学後の負担を減らせる
などのメリットがあります。
AIITを選んだ理由
腰を据えて設計を学びたかった
ITエンジニアとして働いてて思ったのは、「今のまま働き続けても、設計は出来るようにはならない」でした。
理由はいくつかありますが、システム設計の経験を積める機会が限られているのと、
プログラミングと違って細かい試行錯誤がしづらいのが大きな要因だと思っています。
また、書籍で学べる設計の知識は抽象的な内容が多く、いくら独りで勉強しても
実務レベルの設計スキルは身につかないな、とも思いました。
そのため、実務も理論も熟知している教授の元で、腰を据えて設計を学びたかったのが動機の一つです。
最強の資格「CS学位」が欲しかった
去年まで色々なIT系のベンダー資格を取っていたのですが、「最も取る価値のある資格は何か?」をふと考え、
CS学位がそれに該当するのではという結論に至りました。
プログラミングスクール、通ったこともないので実態はわからないけど、年間60万払うならその金でJAISTとかAIITみたいな大学院大学でCS専攻したほうがはるかに役に立ちそうだし、なんなら世界中で通用する資格も取れますよ。「修士」っていうんですけど
— ひよこ大佐🐣✨ (@hiyoko_taisa) October 20, 2019
特に修士以上であれば、海外でもエンジニアとしての一定要件を満たすと評価される可能性もあります。
どうせ取るなら評価される資格がいいなあと思い、大学院での受講を決めました。
外資系企業への転職も視野に入れるため
日本のIT企業と違って、外資系のIT企業にエンジニアとして就職するには、基本的にCS学位が必要です。
反対に、CS学位があれば年齢関係なしに就職できる可能性があるみたいです。
その一例として、一昔前に演歌歌手として有名だったジェロさんは、
歌手を引退した後に大学院でセキュリティを学び、今はセキュリティエンジニアとして働いてるそうです。
niteru-news.info
研究よりも実務に近いことを学びたかった
JAISTやNAIST等、AIITの他にも文系でも入学できる情報系の大学院はあります。
qiita.com
しかし、そちらは専門職大学院ではなく「研究」をやるための学校のため、
入学に際しては研究計画を立てて、在学中に修士論文を書く必要があります。
自分の場合、志望動機がキャリアと実務寄りで、研究がしたかった訳では無かったので、
専門職大学院であるAIITを選択しました。
仕事を続けたい自分にとって単位バンク制度は魅力的だった
ITエンジニアという業種の性質上、稼働時間や作業負荷が一時的に跳ね上がることはよくあります。
そのため、忙しさやコンディションに合わせて受講数を調整できる単位バンク制度は、自分にとって魅力的でした。
1人で勉強するのが寂しかった
資格学習は基本的に孤独でした。もちろんSNSに合格報告を投稿すれば優しい人達がおめでとうと言ってくれますが、
同じ方向を歩んでる人がいないというのは、何とも言えない寂しさがありました。
どうせ勉強するなら、進む方向が同じ仲間が欲しいなと思ったのが1番の動機かもしれません。
履修までの流れ
下のページの「出願要項」の欄
aiit.ac.jp
新規出願の場合、速達書留で申請書や大学の卒業証明書などの必要書類を送る必要があります。
大学の証明書発行は郵送で頼むと結構遅いので(僕は2週間かかりました)、早めに書類を揃える事をオススメします。
受けた講義
ITILとDevOpsについての講義と、CTF形式でCSIRTのセキュリティ事故対応を学ぶ講義を受けました。
講義の様子
受講体制について
AIITは4Q制で、ざっくり3ヶ月ごとに履修申請します。講義は基本的に週2コマあります。
平日の講義は一番早い時間が6限で18:30スタートです。土曜日も開講していて、土曜に2コマ連続で開講してる講義もあったりします。
また、科目履修生は原則フルリモートで受講します。と言うよりも、今はご時世的に正規生/科目履修生関係なくフルリモートで受講するようです。
AIITにはLMSがあり、講義資料のダウンロード、質問、課題提出などはそちらのサイトで行います。
講義の受講やグループワークはZoomやMeet、slackを使います。
要するに、講義の受講は全てオンラインで完結します。
講義内容について
専門職大学院なだけあって、教授のほとんどは実務のエキスパートです。
と言うよりも、実務と研究を同時にこなすような怪物揃いです。
そのため、書籍に中々書かれていない理論の深い部分の他に、
実務レベルの知見を講義で話してくれていました。
しかし、講義や課題の「難易度」はそれほど高くないと感じました。
実際、「もっと講義のレベルを上げろ」という声も生徒から上がっているようでした。
AIITの方針として、生徒の多様性を受け入れ裾野を広くすると言うものがあるみたいで、それが関係しているのかもしれません。
課題・試験について
週10時間程度を課題や試験勉強に充てていました。
課題はレポート形式と、グループワークで調査結果をグループ単位で提出する形式の二つを体験しました。
グループワークは講義外でチームメンバーとミーティングしたり、それまでに調べ物をやったりと
結構大変だった覚えがあります。
試験はそれほど難しくありませんでした。「理解していない奴は落とす」という"殺意"を感じませんでした。
真面目に出席して講義を聞いている人なら、まず問題ない出題内容でした。
また、生徒に社会人が多い背景もあってか、試験や講義に出席できない時の措置も充実している印象でした。
周りの受講生について
受講生のレベルはまちまちでした。物凄く頭の切れる人もいましたが、
大卒で社会人をやっている人であれば全体のレベルは物怖じする程高くないと思います。
私の周りの受講生はほぼ全員社会人で、育児しながら講義を聞いてる人も珍しくありませんでした。
また、中には会社に学費を出してもらっている人もいました。
年齢層は本当に幅広くて(上は55歳、下は23歳くらい)、男女比は7:3程度でした。
感想
講義内容は面白いです。やはり実務+独学では偏りがあるのだな、という認識を新たにしました。
今後も受講を続けようと思います。
それと、仕事がフルリモートなのもあり、退勤後すぐに受講できるオンライン講義は快適でした。
むしろ、もし通勤/通学どちらかがあったら正直キツイかもしれないと思いました。
また、月平均15時間程度残業がある自分のキャパだと、1Qにつき2科目が現実的かなと感じました。
今後の目標
2022年度内に12単位取得して、2023年に入試を受けて正式に大学院生になりたいです。
卒業前の3ヶ月前くらいは仕事を辞めて(またはアルバイトにシフトして)、
本格的に研究や勉強に専念するのもいいかなと思ってます。